関市のヒト

移住経験者だからこそわかる。移住者の気持ちに寄り添う禅僧の挑戦

酒井聖文さん

寺の息子であることを誰も知らない田舎で挑戦したい

岐阜県関市・上之保(かみのほ)地区にある、室町時代から続く禅寺「日榮山(にちえいざん) 明光寺(みょうこうじ)」。そこの長男として生まれた酒井聖文さん(34歳)にとって、「寺の後を継ぐこと」は小さい頃からたびたび出る話題でした。

しかし、高校を出て横浜の大学に進学。卒業後は3次元CAD/CAMの営業やマーケティングの会社に就職しましたが、次第に都会で働くことに疑問を感じるようになり、人と人のつながりを大切にした地方での暮らしを考えるようになります。

「地元に帰れば安泰かもしれない、でも、寺の息子であることを誰も知らない田舎で挑戦したい」

そう思っていた矢先、知人の紹介で島根県雲南市にあるキャンプ場の再建を任されることになり、縁もゆかりもない土地に移住。キャンプ場の管理人のほか、個人事業主として、その土地で採れた米を農家の代わりにネット販売をしたり、地域で採れた農作物を使って地元の高校生と商品開発をしたり、移住のコーディネートを手がけたりなど、さまざまな仕事に携わりました。

転機は30歳のときのこと。いよいよお寺の今後を話し合うことになり、酒井さんは関市に戻る決意をします。

「家族や檀家さんの熱意にほだされ、関市に戻ることにしました。私が寺を継ぐことで周りがみんなハッピーになるのなら、それはそれでいいかな、と思ったんです」

▲関市にも空き家が多く、移住者による活用が期待されていた。

空き家と人をつなげ、地域に開かれた場に

関市に戻った酒井さんは、島根での経験を生かし関市の臨時職員として空き家バンクの整備を手がけることに。

「移住したい方がいらっしゃっても、物件が見つからないというのが関市の現状でした。当時、不動産会社では市街地の物件しか取り扱いがないため、山間部の物件は未開拓だったんです」と酒井さん。

SNSや市の広報誌で呼びかけたり、実際に物件の所有者を訪問したりと地道な活動を続けたことで、当初1〜2件の登録だった空き家は、1年で10件以上に増加。若いファミリー層を中心に、移住を検討している人たちと空き家をつなげる活動は着実に身を結んでいます。

なかには地域に開かれた場として新たに生まれ変わった空き家も。2018年夏に誕生した「そばのカフェおくど」は、明治初期に移築された旧豪農屋敷で、20年以上空き家になっていた物件でした。

こちらも空き家バンクに登録したことで、移住者の目にとまり活用されることに。手打ち蕎麦やガレットがいただけるカフェに誰でも利用できるコワーキングスペースも併設し、現在は酒井さんもここを活動の拠点にしています。

▲「そばのカフェおくど」で仕事中の酒井さん。築140年以上の古民家は居心地抜群。

移住者・地域の人のささいな悩みに寄り添う

2017年の1年間は静岡の専門道場で修行生活を送っていた酒井さん。2018年春に再び関市に戻った後は、空き家事業を法人化し、お寺と仕事と二足のわらじを履いた生活が本格的にスタートしました。空き家と移住者をつなげるだけではなく、移住した後のフォローも行うなど、酒井さんらしいきめ細かい対応で寄り添い続けています。

「移住は楽しいこともあれば大変なことも多いと思います。ごみをどこに捨てたらいいか、自治会に入ったほうがいいか、などささいなことでも最初は知り合いがいないのでなかなか相談できないですしね。暮らしのちょっとしたことから気持ちの面まで、移住者のサポートができればと思っています」

また、法要など寺の仕事で地域を回っていると、世間話や家庭での困り事など思った以上に話を聞いてもらいたい人がいることを実感するそう。

「移住者も地域の人も悩みはそれぞれあります。困っていらっしゃる方が立ち寄り、気軽に悩みを話してスッキリしてもらえるような坊主カフェならぬ『文さんカフェ』ができたらと思っているんです。空き家を使って実現できたら楽しそうですね」

「これからは坊主としても地域に貢献したい」と、キラキラした瞳で語る酒井さんの姿が印象的でした。

酒井聖文さんに質問!

    Q.移住したとき、どんなことを心がけていましたか?
    「私はこんな人です」とこちらからオープンにすると、地域の方も受け入れてくださると思います。

    Q.移住に向いている人とは?
    これも縁だなと思って飛び込める人、そして環境の変化を楽しめる人だと思います。

    Q.関のよいところは?
    子どもが産まれたときに、「ベビチケ」という市内で使える商品券や赤ちゃん用の「ファーストつめきり」をプレゼントされ、関市は子育てに手厚いなと思いました。

酒井聖文さん

酒井聖文
1984年、関市生まれ。大学卒業後、関東の企業に勤務し、3次元CAD/CAMのマーケティングリサーチや営業を担当。2010年から島根県雲南市でキャンプ場の再建などに携わり、2015年に関市にUターン。2018年に合同会社空き家ボンズを設立し、移住のコーディネートを行っている。

日榮山 明光寺
住所:岐阜県関市上之保5419

合同会社空き家ボンズ
住所:岐阜県関市下之保1119-1