関市のヒト

刃物産業の要、「熱処理」を支える仕事人。地元を離れたからこそ気づけた関市の魅力とは

小林慶三さん

会社員→Uターン継業

第6期せきららゼミでは「関ではたらく」をテーマに、大学生が8名のゲストにインタビューを行いました。
普段は、決して聞くことができないような「せきらら」な話をたっぷり聞いた大学生たち。果たして、どんな話が聞けたのでしょうか?

本記事は、愛知学院大学5年の今井萌香さん、中京大学3年の岡田大輝さん、中京大学3年の磯谷陽菜さんが書きました。

せきららゼミの詳細およびほかの参加者が書いた記事はこちら (別ウィンドウで開く)

有限会社コバヤシヒーティング外観

小林さんの仕事について~事業内容、働き方、一日のスケジュールなど~

関市の刃物は分業制で生産されており、小林さんはその過程の一つである熱処理を行う会社(有限会社コバヤシヒーティング)を父から引き継ぎ経営しています。

小林さんは、朝7時ごろから出勤し、21時ごろまで働いています。コバヤシヒーティングでは、刃物の焼き入れに電気窯を使用していますが、窯の火はお正月とお盆以外消えることはありません。
製造業であるため、朝から晩まで規則正しく業務を行う必要があるので、働き方の自由度は低いですが、安定性があることが特徴です。コロナ禍においては「おうち時間」による刃物の需要が高まり、仕事が増えたそうです。

小林さんは、大学卒業後、東京の会社でディレクション業を務めていました。いまでは、その経験を活かし、自社製品のPRも行っています。
今までやってきたことを活かすことで、仕事に対し広い視野を持つことができ、業務の効率化に役立てられているそうです。

電気窯(写真中央)

小林さんにとって「働く」とは

―「生きがい」ではない。
この質問に対し小林さんは開口一番にそう答えました。

関市の地場産業の代表である「刃物」に関わる現在の仕事に「プロとしての誇り」と、「お客様の期待に応えたい」という強い思いを持って仕事をしているとおっしゃっていました。

そんな小林さんにとって「働く」とは、豊かに生きていくためのもの、自分の好きなことをするためのものとのこと。

「自分にとって大切な人たちに、最低限自分がしてもらった位の生活が送れるように。子どものやりたいことや夢を応援し、従業員の生活を守れるようになりたい」。

その言葉から、父として、そして経営者としての責任や覚悟を垣間見ることができました。

朝礼も爽やかに笑顔で!

小林さんの学生時代について

~小学生時代~
小林さんは、ザリガニ釣りやクワガタ採集など、関市の自然を活かした外遊びを好む小学生でした。遊びに熱中するあまり帰る時間を忘れ、お母さまに叱られたこともあったようです(笑)。
また足がとても速く、クラスでいつも人気者だったそうです!


~中学生、高校生時代~
小林さんは、とても厳しい塾に通っており、勉強に力を入れた中学生時代を過ごしました。ここで初めて大人の理不尽さを感じたそうですが、「いま思えば、愛を持って指導に当たってもらえていた」とおっしゃっていました。

中学生時代は、バスケットボール部のキャプテンを務め、高校時代はサッカー部に所属し、部活動を通して責任感を身に着け、充実した青春を過ごされました。また高校ではその人望と責任感が買われ、生徒会長に任命されます。「話は短く・面白く」をモットーに学校の運営に尽力しました。
「大変なことも、乗り越えればその分得られることがある」と、この学生時代を通して学ぶことができ、今でも大切にしている考え方なのだと教えていただきました。


~大学生時代(18歳から22歳ごろ)~
大学は埼玉県の駿河台大学経済学部に入学。学生時代は、イベントでのアルバイトや展示会の商品案内など、様々なアルバイトを経験。サークルにも所属し、サークル仲間との沖縄旅行が学生時代の一番の思い出に残るエピソードだと語りました。
1年間アメリカへの留学もしながら、関東で4年間の学生生活をエンジョイし、大学を卒業しました。

自社製品の数々

小林さんの人生の転機

小林さんは、関市の高校を卒業後、関東の大学に進学し、そのまま関東のイベント会社へ就職。6年間勤務した後に、関市にUターンしたことが人生の転機だと語りました。

関市を離れてはじめて気づいた「地元の良さ」、そして「地元でしかできないことをしたい」という想いから、現在の仕事である刃物の熱処理の仕事に就きました。

「工場見学もお気軽に」と言っていただきました!

小林さんが普段生きる上で大事にしたいこと・願っていること

「誠実に」ということを大事にしている小林さん。また、祖父がとても尊敬できる人であったため、自分も祖父のようになりたいと語りました。

また、 自分の家族に対して、やりたいことができる・挑戦できることを願っており、小林さんは、その手助けをしたいと語りました。

焼き戻しをする小林さん

「関市で働く」ということに関して、小林さんがパッと想い浮かぶこと

「関市で働く」ということに関して、小林さんの意見は「関市が無くなることはない」でした。小林さん自身が携わる刃物関連産業など、地域の産業が安定しており仕事も多くあるため、このように思い浮かんだそうです。

また、 関市の特産品である関の刃物づくりに携わる仕事をされている小林さんは、関市の刃物をつくる過程の部分も、機会があれば触れてほしいと話してくださいました。

小林さんが育てる多肉植物

小林さんの趣味、休日の過ごし方

小林さんの趣味は「多肉食物を育てる」ことです。詳しく話を聞くと、実は多肉食物を育てる過程で、理想の形へと成長させるためには、水をあげるタイミングなど、非常に奥が深いとのこと。

多肉植物の種類等を示す立て札を、プラスチックではなく自家製ダマスカス鋼製に変更して写真をInstagramへ投稿したところ、これが大バズリ!Instagramのフォロワーが1,000人を突破し、立て札の評判も好調だそうです!

多肉植物の手入れをする小林さん

小林さんの今後の展望、考えていること

小林さんの今後の展望は「今ある関の刃物の良さを、さらに良くしていく」ことです。

関の刃物は、ミシュラン3つ星シェフも愛用品とするほど良質であるなど、すでに誇れるものが多くあります。この伝統を継承しつつ、今後も一歩ずつ着実に、今ある良さをさらに良く、今ある強みをさらに強くすることが小林さんの展望です。

社員の方々と

小林慶三さんに質問!

    Q:子供の頃の夢は何ですか?
    A:小学生の頃の夢は、飼っていた犬が亡くなった経験から「獣医」、チューリップを育てた経験から「花屋さん」になりたいなど、身の回りにあるものに興味を持ち、夢を抱いていました。

    Q:関市の魅力は何ですか?
    A:「住みやすさ」です。大学時代の東京の経験を通して、豊かな自然やまちの雰囲気など、地元を離れ俯瞰的に関市を見る機会があったからこそ、地元の「関市ならではの住みやすさ」に気づきました。

    Q:関市のおすすめのスポットや名物、体験してほしいことは?
    A:おすすめの名物は、うなぎです。関市に来たのに、これを食べないなんてもったいない。また、鵜飼もおすすめです。お隣の岐阜市の鵜飼とはまた違った魅力があるので、ぜひ見に行ってほしい。

小林慶三さん

有限会社コバヤシヒーティング 専務取締役
1996 年、関市東山にて創業。大学卒業後、東京の一般企業に勤めるも30歳を機にU ターン。地場産業である関の刃物を「地元の皆さんと盛り上げたい」との思いから家業である熱処理業を引き継ぐ。

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